織物は2本の糸が織りなした 「布」 です。布には1本の糸で編んだ 「ジャージー(jersey)」 も有ります。
ジャージーはそれ程種類が豊富で有りませんのでここでは 「織物」 につきまして。 |
◆ 織物の三原組織 |
1 平織り |
経糸 (たていと) と緯糸 (よこいと) が一本毎に交差している組織。 |
2 綾織り(斜文折り) |
経糸 (たていと) に対し、緯糸 (よこいと) が一本置きに飛ばされている組織。 |
3 繻子 (しゅす)織り |
経糸 (たていと) に対し、緯糸 (よこいと) が二本以上置きに飛ばされている組織。 |
織物には、基本的にこの3種類しか有りません。各々の生地はこの3組織を単体・組合せで作成されます。
例えば、ジャカード(Jacquard)織りは、以前は文様紙、昨今はコンピュータにより予めセッテイングされた柄が
織り上がる様にされています。因みに、ジャカードは人名で、彼が19世紀の始め考案した織機です。 |
◆ 絹の糸原料 家蚕絹と野蚕絹 |
家蚕絹は、家の中で桑の葉を食べさせ育てるお蚕さん。
現在では養蚕家は少なくなりましたが、今でも、皇后の美智子さんがお育てになっています。 |
野蚕絹は、字の如く、野原で生育しているお蚕さん。
中国の柞蚕糸 (さくさんし) 通称、山繭 や インドのタッサー (tussah) はこれになります。 |
◆ 生糸 (きいと) と絹紡糸 |
生糸は、繭を70度位のお湯に浮かべて、数個の繭から糸口を引き出し、抱き合わせ解きほぐした長い糸。
別名、ローシルク (raw silk)。この作業を手で行った糸を 「座繰 (ざぐり) 糸」 と呼んでいます。 |
絹紡糸は生糸の製糸工程で切れて使用不可になった生糸のくず糸を紡績し製糸した糸になります。 |
◆ 絹 (シルク) 生地の種類 |
1 サテン・クレープ (satin crepe) |
日本名は繻子縮緬 (ちりめん) あの水戸黄門さん仮の姿、「越後のちりめん問屋」 爺さんです。
その縮緬は生糸 (絹原料糸) でしかできません。細かい製法は別として縮れ糸とお思い下さい。
この縮れ糸を緯糸 (よこいと) に使用し、繻子織りで織り上げた生地になります。
「糸」 偏つづきで、いと、たいへんと思いますがご勘弁下さい。
「経」 (たて)・「緯」 (よこ) は、
日本標準時になっている明石市、東 「経」 135度で、デニム産地西脇市、北 「緯」 35度でイメージして下さい。
尚、ZIPANGUは25年間この素材を利用させて頂いております。 |
2 シフォン (chiffon) |
この生地は絹織物の中で一番柔らかくて、薄い素材です。別名シルク・モスリン。
組織は平織り。シフォンは仏語で 「光を通すヴェール地」 と云う意味との事です。
天女の羽衣感じがする布で、わたくしどもは巾広ロングスカーフを作成しております。 |
3 ジョーゼット (georgette) |
感じはシフォンに似ていますが、風合い (お肌触り) が異なります。
ジョーゼットはシフォンに比して、より凹凸感が有り (ややざらざら気味) 更に、しぼも有ります。
シフォンより丈夫ですのでソフト感のあるブラウス素材として良く使用されています。
又、georgette は仏のお針子さん (縫製師) Madame Georgette さんから取ったものです。 |
4 絹オーガンジー (organdy) |
張りがあり、薄く、軽く、堅い触感、透明感がある生地。特に張り感が特徴です。組織は平織り。
ドレスで体のフォルムの添わず、出っ張って見える感じの生地は大概この素材です。
オーガンジーは基本的には綿オーガンジーでした。大正時代、ニューヨークの織物業者が
日本の生糸を原料として、世界中にアピールし脚光を浴び以後、絹オーガンジーはメジャーになりました。 |
5 デシン (crepe-de Chine) |
英語では、flat crepe フラット・クレープです。しぼ山が比較的低い縮緬素材で平織りです。
フランスの織物業者が中国の縮緬を模倣して作った生地で、チャイナ (中国) の縮緬=デ・シンと。
ジョーゼットとデシンの違いは、ジョーゼットは経緯糸ともに強撚糸で、デシンは緯糸が強撚糸で織り上げ。
*強撚糸は、漢字通りで、強く撚 (よ) りをかけた糸になります。ジョーゼットはざらざら、デシンはざら感じ。 |
6 羽二重 (はぶたえ) |
地が薄く、柔らかく、光沢があり、ふわふわ感触のある生地。組織は平織り。
これらの特徴は、良質な撚ってない生糸で織り上げ後、精錬 (セリシン等の除去) を行う事により得られます。
時代劇などで、この言葉をお聞きなった事があると思います。着物には付きものでした。
現在では、薄地のもの (10匁位) は高級婦人服の裏地に、厚手のもの (14〜16匁) はブラウス等に使用。 |
7 富士絹 (span silk) |
羽二重に似ている生地ですが、原料が生糸でなく、絹紡糸になります。組織は平織り。
明治時代に富士瓦斯 (がす) 紡績で作り出された生地から 「富士」 絹となりました。
絹紡糸で織った後に、毛羽を焼き落とし (ガス焼き)、精錬され、染色されます。
生地は、当然、リーズナブルなお値段になっています。 |
8 シャンタン (shantung) |
布上に節 (ふし) が点々として所々に見える生地。組織は平織り。
節の形態は色々。例えば、玉糸 (dupion silk) は二匹の蚕さんが一つの繭を造ったもので、その繭は解きにくく
節くれた感じの糸になり、それを緯糸に、生糸を経糸にして織った生地です。
シャンタンの命名は、中国 「山東」 省で最初に織り上げた事からとの事です。 |
9 綾絹 (surah) |
布目に斜めの線が走っていて、ソフトで滑りがなめらかな正絹の綾織物です。
一般的に、表 ・裏の目安は 「の」 の 「字」 に見える方が表になります。
皆さんのお持ちの絹スカーフは殆どこの生地になります。
薄くても、腰と光沢を出す為、緯糸を水に浸し、織り上げる際、地合を締めて織ります。 |
10 タフタ (葡 taffeta) |
生地の横方向に畝 (うね) 状の線が見える布です。組織は平織り。
絹タフタは細い横畝とトローンとした感じが特徴です。
「感じ」 を詞で表現するには限界があります。一番は、ご自身で感触を味わって頂く事が・・・。
横畝がある総称として「タフタ」と云いますが、それぞれ特徴違いで、
ファイユ (仏 faille)、オットマン (ottoman)、グログラン (仏 gros-grain)、ベンガリン (bengaline)
モロケン (仏 marocain) 等の種類があります。畝が細 ・太、生地の厚み、織糸の違いから異なる織物です。 |
以上が基本的な絹の素材です。 |
上記以外には、生地自体が装飾性を伴っている素材で |
レースは絹素材には欠かせないものですので、ここで少し触れます。
女性をより女性らしくしてくれる 「レース」。女性らしくと云う詞は非常に問題があるかも知れませんが、
レースは空白部分を構成する生地、見えるようで見えないとても 「艶」 がある素材なものですから・・・。 |
レースの種類 |
1 リバー・レース (leaver lace) |
極細糸 (極細番手) を使用し、リバーマシンにより、繊細で優雅な模様を出せるレース。
フランス、パリから北へ200km、ドーバー海峡に面したカレーがナンバーワンの産地。
華やかなルイ王朝時代には、フランス各地に手工レース製作場が設けられました。その名残です。
ヨーロッパでは、レースと云うと 「リバー・レース」 の事を指します。 |
2 ケミカル・レース (chemical lace) |
4〜5匁の薄い羽二重にエンブロイダリー (刺繍) マシンで綿糸で緻密に刺繍した後、
薬品 (苛性ソーダ等) を用いて、羽二重部分を溶かしたもの。厚みが有り、外観が豪華に見えるのが特徴。
ケミカル・レースは日本の命名で、欧米ではボーンアウト・レース(burnout lace) と呼ばれています。
スイス、サン・ガーレンの綿ギピュール(guipure)がつとに有名です。 |
3 エンブロイダリー・レース (embroidery lace) |
当に、刺繍レースの事です。綿ローン・ボイルなどの生地に細番手の綿糸などで刺繍を施したもの。
又、穴を開け、その穴を縁かがり刺繍するテクニックもあります。
1830年代、スイスのホセ・ハイルマンさんが刺繍ミシンを開発した事が発祥です。
産地は、圧倒的にスイス・オーストリアになります。 |
4 編み・レース (needle lace) |
メリヤス (伸縮自在で編物のような布地) 用のラッセル機などで編んだレース。
皆さんのお家 (うち) に下がっているレースのカーテンがこれに当たります。 |
以上が、機械で作り出されたレースになりますが、レースはその昔はすべて手刺繍でした。
日本でも、着物の柄を手刺繍で創り出していました。
簡単に手刺繍が見られるのは、中国にお出かけの際、高額なスワトウのハンカチで確認できます。
スワトウは中国の汕頭 (広東省にある港湾都市) です。但しお土産用のスワトウは殆ど 「もどき」 です。
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